ちょっとツッこんだ 歯のはなし

今月は、虫歯のあるちびっ子たちの強〜い味方サホライドについてお話ししましょう。

9月号

 

 

〈シリーズ・子供の歯〉 そのM 「サホライドってなに?」

   

とかく小学生以下の子ども達は、なかなかきれいに歯磨きができません。かといって虫歯をそのままにしておくと、麻酔をして治療という大掛かりな治療になりますので、いかに虫歯が小さなうちに治療を行うかが、大きなポイントといえるでしょう。

 しかし、親がいくら治療をしてもらいたくても、診療台の上でかたくなに口を閉ざされてしまうと、歯医者には手の打ちようがありません。まさか力づくで治療を行うわけにもいかず、途方にくれる歯医者にとって、このサホライドは強〜い味方なのです。

 歯医者が嫌われるのは、あの削る時の音が耳障りだというのもありますが、何より自分の目で見えないところを治療されるという、恐怖感も挙げられるでしょう。しかも、歯の治療は大人だって嫌なもの。痛みがないのに、「虫歯だから治さなければならない。」という大人の言い分をかさに、子どもにだけ治療を無理強いするのはかわいそうです。

 むしろ、ごく小さいころに押さえつけられて歯の治療をした子は、少し大きくなって自我が芽生えた頃「あんな嫌な思いをするくらいなら、治療なんてしない!」と決めてしまって、たった一本の歯と引き換えに、それ以外の歯をぼろぼろにしてしまうこともあります。まさに悲劇ですね!――そこで、このサホライドの出番です。

 この薬は、フッ化ジアンミン銀の溶液で、特に前歯の虫歯に用います。小さなお子さんが、ニッと笑った時に、乳歯が黒くなっているのを見たことありませんか?あれは虫歯を放置しているのではなく、この薬によって虫歯の部分が黒く着色しているのです。見た目はあまりよくありませんが、銀とフッ素の働きで、虫歯の進行が抑えられるのですから、必要以上に痛く、怖い思いをしなくてすみます。

 しかし、このサホライドを塗ったからといって、虫歯が治るわけではありません。毎日の歯みがきを怠れば、やはりじわじわと虫歯は進行してしまいます。痛みが出てくると、残念ながら本格的な治療にとりかからなくてはなりません。それから、前歯に比べて奥歯は食事のたびに食物のかすが引っかかりやすく、前歯ほど薬の効果が期待できません。そして、一番知っておいてもらいたいことがこれです。サホライドは、おいしくありません。

小児科などでもらう飲み薬には、甘いシロップで味付けされたものもありますけれど、歯医者に甘い薬はありません。たいていが苦かったり、すっぱかったりします。甘いものは虫歯のもとですので、この点はどうぞご勘弁を。

 なにはともあれ、特に1~3歳程度のお子さんの初期虫歯に、サホライドを塗って進行を抑えるという処置は有効だと思います。(もちろん、虫歯を作らないようにすることが肝要です。)

来月からは、
「お年寄りと歯」について
お話しすることにしましょう。

院長の吉田です。

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