ちょっとツッこんだ 歯のはなし

 明けましておめでとうございます。知っとくシリーズも今年で7年目。歯と身体について詳しく、かつわかりやすくお話ししたいと思っておりますので、本年度も宜しくお願い致します。では早速、このテーマからいきましょう。

1月号

 

 

〈シリーズ・高齢者と歯〉 そのC 「誤嚥性の肺炎とは?」

   

 誤嚥性の肺炎というのは、食物やだ液が誤って気管や肺に入ってしまい、だ液などに含まれる細菌を、身体の抵抗力でやっつけきれない時や、食物によって内部組織が傷つけられた時などに発症します。健康な人であれば、食物が入りこんでもせきなどで排出することができるのですが、とりわけ歯のないお年寄りなどでは、喉の筋肉のバランスを崩してしまっていることが多く(入れ歯を入れていない・歯がぐらついていて、しっかり噛めないなどの理由で)、誤って入りこんだ食物を排出する反応が不十分になりやすいものです。よくお年寄りが食事中にむせたり咳き込んだりしていますが、あれこそがまさに身体の防御反応だと思って下さい。

さて、誤嚥は二つのタイプに分けられます。先ほどお話ししたように、むせる・せきこむといった症状を伴うものと、伴わないものです。イメージ的には、激しく咳き込むほうがより深刻だと思われるかもしれません。しかし、本当にそうなのでしょうか?

 人間の体温は約36度。身体の中は暖かくて、もちろん適度な湿り気があります。この環境は細菌にとって住みやすいところ。ビフィズス菌などのように腸の働きを助ける菌もありますが、口の中に住む菌のほとんどは、人間にとってあまりよい働きをしてはくれません。そんな菌が身体の中で繁殖するような事にならないように、食道以外のところに入った食物などを、激しく咳き込んで身体の外に出そうとします。

 もうおわかりですね。つまり、咳き込むという症状がなければ、誤って気管に入り込んだ菌などが、そこで繁殖してしまいます。よって、こういった反応がない誤嚥も、同様に深刻なのです。もちろん身体の中には抵抗力というものが備わっていて、外から進入してきた身体に害を及ぼす菌を、やっつける機能もあります。しかし、お年よりは抵抗力が下がっている事が多く、ほんの少しの誤嚥が重篤な肺炎を起こす原因になっていることさえあるのです。

 この誤嚥性肺炎を予防するには、ふだんから口の中をきれいに清掃し、口の中の磨き残しを少しでも減らしておくことが重要です。こうすると細菌の絶対数が減りますので、もし誤嚥をしたとしても、体に害を及ぼす菌の数が減り、結果より軽度の肺炎ですむ可能性が高くなるでしょう。お年寄りに口腔ケアがとても重要だということがお分かりいただけたことと思います。

来月は、「誤嚥性肺炎を起こりにくくするには
どうしたらよいか?」についてお話しします。

院長の吉田です。

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