ちょっとツッこんだ 歯のはなし

 大変遅くなりまして申し訳ありません。
今月は先月の続きです。お年寄りこそしっかりした噛み合わせが大切な理由をお話ししていきます。

5月号

 

 

「咀嚼の話」 -その4- 〜お年寄りと咀嚼の問題〜

   

 お年寄りを悩ませる病気はたくさんあります。歯槽膿漏、難聴、足や腰の痛みに加えて認知症の問題。もしこれらが、歯の噛み合わせと密接に関係しているとしたらどうでしょうか。まず、歯に関係しているという点で、歯槽膿漏から考えてみましょう。この病気は歯磨きがしっかりできていないともちろんひどくなりますが、(入れ歯のばねが引っかかっているとか、残っている歯の関係で)強い力が加わり続けると起こりやすいもの。これを防ぐためには、歯みがきはもちろん、歯ぐきにぴったり合った入れ歯を入れることが必要です。入れ歯安定剤などで無理やり安定させるのは、食べかすなどが余計にたまりやすくなるので止めましょう。

 また、同じ入れ歯を何年も使い続けていると、噛み合わせの面がすり減って低くなります。このとき顎の骨もすり減り、異常な位置で噛むことになるのですが、顎の関節が耳のすぐ近くにあるため、音を伝える骨やそれに関係した場所が影響を受けます。この結果、難聴・耳鳴りなど耳の不調を引き起こすことも考えられます。

 腰痛、ひざの痛みも、左右の噛み合わせの高さが適切でないと起こりやすいものです。左右の噛み合わせが狂っていると、まず首の骨がずれ、それを補うために肩や腰、ひざなどが順にずれて身体全体でバランスを取るからです。必然的に身体はゆがみ、それが長期化すると慢性的な痛みにつながってもおかしくありません。

最後に、認知症の問題です。上の歯は頭蓋骨から生えているので、噛んだ力が直接骨に伝わります。このとき歯の噛み合わせや入れ歯の噛み合わせが適切でないと、噛んだ力が頭蓋骨を変形させ、(目に見えるほどではありませんが、本当に変形します。噛む力を侮ってはいけませんよ!)その中に納まっている脳を圧迫して悪影響を及ぼすのは必至でしょう。本来人間の中枢であり、だからこそデリケートなつくりの脳を守るために、硬い頭蓋骨で保護する必要があるのですから、入れ物が変形してしまえばどんな異常を引き起こしてもおかしくはありません。実際、当院で入れ歯を作り直し、噛み合わせの調整を行なった方で、認知症の改善がみられたケースがありました。

  明るい老後を送るためにも、身体に合った位置で噛むということが必要不可欠だと言えると思います。噛み合わせの不調は、あたっている部分を【削る】だけでは治りません。また、スプリントなどの噛み合わせの修正装置で噛みあわせを高くしすぎるのもだめです。こうした手探りの治療で体調の悪化を招いた方が数多くいらっしゃいます。問題は、その噛み合わせがあなたにとって適切かどうか、なのです。

来月は咀嚼から離れて、
「銀歯のはずれる理由」をお送りしましょう。

院長の吉田です。

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