ちょっとツッこんだ 歯のはなし

 今月は先月号の続きです。お年寄りが 物を
しっかり噛むことができると、どのようなメリットがあるかについてお話しします。

4月号

 

 

「咀嚼の話」 -その3- 〜よく噛むことの効能・お年寄りの場合〜

   

 子供がものをしっかり噛むことができると、よりよい成長の手助けになるということをお話ししましたが、では大人はどうでしょうか。

 食物を咀嚼し、そこから栄養を摂取するのは、大人も子供も同じことです。身体を維持するために、噛むことができるという要素は無視する事などできません。しかし一部の老人介護施設では、誤嚥をふせぐという目的で入所するとすぐに入れ歯を外してしまい、流動食を食べさせるところも存在するようです。

 人間は、何らかの動作をする時に歯を食いしばるのが普通です。これは噛むことで身体のバランスをとりやすくするからです。もし、歯のないお年寄りが、動作をするために歯を食いしばろうとしても、歯が抜けていたり、入れ歯を入れていない、また入れ歯がすり減って低くなり、うまく噛めなかったりすると、身体のバランスをとるのが難しくなります。このような状況が続くと、栄養の摂取が不十分なために骨がもろくなり、また噛みしめることによって保たれる身体のバランスも崩れがちになるので、転倒してしまって骨折をしてしまうことも考えられます。治療の為に入院しても、入れ歯なしでは身体の機能自体が低下してしまうので(バランスが悪いなど)リハビリも思うようにいかなくなる恐れがあります。

 十数年前、ある老人介護施設で、歯のないお年寄りに入れ歯を作って入れてもらうようにすると、寝たきりだった方が、起き上がることができるようになったという話がありました。

 噛めなければ、噛まずに摂取できる高カロリーの流動食を食べさせればいい、というわけではありません。横になったままの食事では、のどの筋肉や骨の位置がずれるので誤嚥を起こしやすくします。

起きて、自分で食事をする。これだけのことで、お年寄りを悩ませるトラブルのいくつかは 回避する事ができるのです。

 

来月は、「咀嚼の話」 -その4- 
お年寄りと咀嚼の問題について さらに深くお話しします。

院長の吉田です。

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