先月号でも少しお話ししましたが、誤嚥性肺炎は、口の中に多く存在する細菌が、気管など本来入るべきではない部分に入り込むことで引き起こされます。そういったわけで、この誤嚥性肺炎を防ぐためには、次の点に留意することが必要です。
(1) 歯みがきをして、口の中の細菌の数を減らす。
これは、もし仮に誤嚥を起こした時に、細菌の絶対量が少なければ、そうでない人に比べて肺炎を起こす率が下がる、という理由からです。お年寄りの口の中は、歯ブラシを握る力の低下によって清掃が不十分になりやすいもの。特に脳梗塞などの病気のリハビリ中などは注意が必要です。この汚れを、身近な人が代わりに取ってくれればいいのですが、そううまくいっていないのが実情です。
皮肉なことに、歯みがきのときの磨きのこしが原因で、総入れ歯の人よりも歯の残っている人の方が、口の中の菌が多いというデータも見られます。いくら歯を残した方がいいからといっても、食事のたびに大量の菌を飲み込んでいると、身体の抵抗力が下がった時に思わぬ病気を引き起こす原因になります。
じゃあ、総入れ歯の人は何もしなくて大丈夫か、というとそうではなく、入れ歯も定期的に洗浄剤等で除菌することが必要。入れ歯だってお口の中で使う道具ですので、使えば自分の歯同様汚れるからです。歯ブラシで入れ歯を磨く方がいらっしゃいますが、これは控えた方がいいでしょう。なぜなら入れ歯の表面に細かな傷がつき、そこで雑菌が繁殖しやすくなります。きれいにしたつもりが、逆に入れ歯を汚す手助けをすることになっているわけです。
一部の老人ホームなどでは、誤嚥性の肺炎を防ぐために、定期的な入れ歯の清掃を行っているようですね。介護士の方々は、とかく入れ歯というものの扱いに慣れておらず、場合によっては入れ歯を預かるところもあると聞きます。しかし、ちょっとしたコツさえつかめばそれほど難しいことはありませんので、入れ歯の清掃と歯みがきはしておいて損はありません。
歯みがきや入れ歯の清掃が大切だということが、お分かりいただけたことと思います。
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