ちょっとツッこんだ 歯のはなし

 今月は、先月号の続きです。誤嚥性肺炎を起こりにくくするために気を付けるもう一つの方法をお話ししましょう。

3月号

 

 

〈シリーズ・高齢者と歯〉 そのE 「誤嚥性肺炎を起こりにくくするには?(2)」

   

 率直に言いますともう一つの注意点とは、これです。

 (2) 虫歯や歯槽膿漏で失った歯は、もとあったように治す。

何だ、そんなこと。――なんて思いませんでしたか?

当然のことながら、人間の歯は上下左右全部で28本(親知らずまで入れると32本)あります。ところがお年寄りばかりでなく、三十代の人の中にも、すでに一部の歯を失っている方が見受けられます。

一本でも歯がなくなると、歯はその場所にとどまっていることができません。隣の歯が倒れてきたり、反対側の歯が伸びてきたりします。こうなると、歪んだクギをたたき続けると曲がってしまうのと同様、歯を噛み合わせるたびに、両隣の歯が倒れこむのを加速させるようになります。

一度狂った噛み合わせは、意図的に治療を行わない限り元に戻ることはありません。噛み合わせが狂うと、噛みにくいのでより力を入れて噛むようになり、必要以上の力で噛み続けると、顎の関節に負担をかけることになります。この状態が続けば、顎の関節を作る軟骨がすり減り、顎が開け閉めするたびにシャリシャリ音がするようになるでしょう。

この音は、顎の骨同士がこすれあい、スムーズに動かなくなった時に起こっています。しばらくそのままにしておくと、音がしなくなる場合がありますが、その時には、顎の骨がすり減ってしまい、症状が悪化したと考えた方がいいですね。こと顎の不調は、自然に治ることはありえません。

顎の関節の位置が狂い、しっかり噛みしめることができなくなったとき、歯一つ一つに関係している筋肉のバランスも狂いますし、もちろん顎を開け閉めする筋肉や、物を飲み込むために使われる筋肉の働きも鈍くなります。(歯と筋肉の関係については、ホームページをご覧下さい。)

このような悪循環を防ぐためにはどうすればいいのか、と言うと、しっかり物を噛むことのできる噛み合わせを作ればいいのです。すなわち、抜けたままの歯をそのままにしないこと。こうすれば、筋肉のバランスを崩さないでいられます。歯がないなら、入れ歯を入れる。歯が残っている人は、しっかり噛める歯に治療を行う。決して難しいことではありません。基本的な歯の治療が、健康な老後を約束してくれます。歯科の敷居は高いとよく言われますが、今一度歯医者さんで健診してみてはいかがでしょうか。

来月は、長年使ってなじんだ入れ歯の
危険性についてお話ししましょう。

院長の吉田です。

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