一見同じように見える永久歯も、一個一個形や大きさ、溝の模様などが違います。同じ年齢の、大人の歯であっても、どれ一つとして同じものはありません。一人一人遺伝子も違いますし、小さい頃から何を食べてきたかによっても違ってくるからです。
永久歯は、生えてくる前には、まだしっかりとした根が出来上がっていません。親知らずを除いた全ての歯牙が根の部分を含めて完成するのは、15歳頃です。
歯が、歯ぐきの上に頭をのぞかせ反対側の歯と噛み合うようになって、噛む力の影響を受けながら根の先端部分が完成して行きます。歯並びががたついていると、そのがたついた噛み合わせでの力の加わる方向が、根の形に影響を与えると考えられています。そのため、歯を支える根の形が一人一人違うのです。また、根は噛む力の加わり方によっても、違いがでてきます。
一般に、食べ物を噛み切る役目の前歯には 奥歯ほどの力が加わりませんから、根はたいていの場合一本です。(根の中の神経の管に、側枝・そくしと呼ばれるものが2〜3本できている時もあります。)
ところが、小臼歯(前から4番目と5番目の小さな奥歯)には、2本あるものがありますし、その奥の大臼歯(6歳臼歯など)には、3〜5本の神経の管があります。奥歯(臼歯)は 根の数が多く、垂直に噛む力と 食べ物をすり潰す時の横からの力に十分耐えられるよう丈夫な構造になっているのです。
インプラントという、人工の根を作って歯ぐきの中に埋め込み、噛み合わせを作る治療がありますが、この治療は前歯・奥歯という場所にかかわらず、埋め込む根の部分は一本しかありません。奥歯に加わる複雑な力は、杭を抜く時のような負荷がかかります。それを、一本だけの根で支えるのは、大変難しいと言わざるを得ません。さらに加わる力の方向と、人工の根の角度がA軸(右の写真)のように ずれていたりすると、せっかくかぶせ直しても、横からの力で歯ぐきが腫れ、歯そのものを抜かなければならない、という事になる場合があります。天然の歯に勝るものはありません。 日ごろのメンテナンスで、その大切な歯を守りましょう。 |
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