「きらっと光る、白い歯。」
男の人ばかりでなく、女の人だってあこがれます。テレビタレントさんの口元からのぞく白い歯のほとんどが、作り物の歯であるという事実が、それを物語っています。
そんな歯に対する憧れのせいか、歯の治療のために来院される患者さんの中に、奥歯まで白い詰め物をしている方を、見かけることが多くなりました。
見た目が美しく、かつ、噛み合わせにも問題がない材質ならいいのですが、たいていの場合、この白い詰め物には、歯に本来なくてはならない山や谷が充分に作られていません。ほとんどがつるんとした、平らな形に詰められています。
この材質はレジンといい、歯と同じ色の粘土のようなものを削った場所につめ、特殊な光で固めることによって、削った箇所を修復するのです。
このレジン、われわれ治療サイドにとっても使いやすく、患者さんサイドにとっても治療時間が短くてすむ、など、いいことばかりの材質のように思えます。ところが、使う場所を間違えると、身体によくない影響を及ぼします。
まず、硬さの問題。もちろんこのレジンは歯のエナメル質(硬度7・水晶の硬さ)より柔らかいので、特に噛み合わせ面に使われた場合には、より早くすり減って、低い噛み合わせを引き起こす可能性があるということは否めません。
低い噛み合わせは、顎の関節をすり減らす原因の一つです。顎の関節がすり減って隙間が大きくなると、下顎の骨の動きを保護するクッションの動きがおかしくなり、口が開かなくなる場合もあるのです。
また、山とか谷といった、もともと歯になければならないものが作りづらく、しかもつめたあとに磨くことで、さらに低い噛み合わせを作る危険性があります。
金属が見えるのが嫌だ、とか、治療に何度も通うのがいやだ、という理由で、白い詰め物をするなかれ。歯の溝は効率よく物を噛むために、必要なものです。ならば、元あったような形に治療することが肝心です。
最近では、虫歯になりにくくするために、歯の溝を透明なプラスチックでつめてしまう予防方法がありますが、これも同じ理由でやめたほうがいいでしょう。虫歯はブラッシングで防げますが、顎への負担は将来に与える影響が心配です。
噛み合わせ面に白い詰め物をして顎の動きが不安定になり、頭に加わる力が異常なほうに働いて、おねしょをしていた小学生もいました。
見た目を気にして、将来不安で過ごすか否か。選ぶのは、あなたです。
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