舌って、なぜ口の中にあるのでしょうか。
口を閉じてしまえば外からは見えません。たいして何の役に立っていないかのように思えます。「嘘をついてばかりいると、閻魔様に抜かれるよ。」なんて言われたのも、舌。確かに舌がなくなると、何もしゃべれなくなるでしょうから、もう二度と嘘をつくことはないでしょうね。つまり舌は、ことばを発音するために必要不可欠なものなのです。
それからテレビのグルメ番組で、レポーターのこんな表現を聞いたことがありませんか?「山海の珍味に舌鼓を打つ。」「このケーキは、舌触りがなめらかですね。」などなど。 人間が生きていくうえで大切な、他人とのコミュニケーションを取るのにも、また、身体を健康に維持する為、食物を食べるときにも舌は必要なものなのです。
では、もしこの舌という器官の機能が正しく働かなかったら、どうなるでしょうか。そもそもそんなことが起こるのでしょうか?
例えば舌の働きのひとつに、食物を歯の上に押し上げる、というものがあります。この働きのおかげで、すばやく食物を噛み砕き、飲み込みやすくすることができるのですが、食物を押し上げるべき歯が抜けたままだったり、左右で高さが違っていたりすると、よりよく噛むために舌は本来の仕事以外のことまでやらなければなりません。(抜けた歯の部分を補うために、変形する・不自然な形をして、噛み合わせに食物を押し上げる、など。)
このことが舌のバランスを崩し、結果、舌骨にくっついているのどの筋肉のバランスを崩し、機能を低下させるのです。のどの筋肉の機能低下は、誤嚥(ごえん)を引き起こします。
お年寄りでは、この誤嚥が肺炎をおこす原因にもなっています。事実、介護施設などでは、歯がないのにもかかわらず入れ歯を入れていないお年寄りの、誤嚥による死亡が大きな問題となっています。
「お年寄りにおきていることは、関係ない。」のではありません。いつかは私も、そしてあなただって歳はとるのです。
最近よく耳にする睡眠時無呼吸症も、噛み合わせの悪化で顎の周辺の筋肉バランスが崩れ、舌がのどのほうに沈み込んで生じると私は考えています。
歳をとったとき、年齢相応で過ごすか、若く過ごすか。若くすごすために必要なのは、しっかりと噛むことのできる歯なのです。
※誤嚥 :食物が食道に入らず気道にはいってしまうこと。お年寄りなどでは、
この誤って入り込んだ食物を反射で外に出すことができず、結果
肺炎を引き起こすケースが多い。
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