財団法人口腔保険教会刊行の「咀嚼の本」によれば、咀嚼とは生命の維持に直接的にかかわる、身体的にも精神的にも不可欠な行動だそうです。簡単に言うなら噛めない状態が続くと、身体も心も健康でいることは難しいということです。
人間は生きていくための栄養素を、食物から得ています。食物が含む栄養素は、人間の身体の小腸などで吸収されますが、吸収するためには食物が分解されて細かくどろどろになっている必要があります。このため、食物を噛むことが必要なのです。
仮に、食物をかたまりのまま消化液に浸しておいても、身体に吸収できる大きさまで細かくどろどろにすることは不可能ではありませんが、大量の消化液と相当な時間が必要でしょう。あまりよく噛まずに水やお茶で食物を飲み込むと、大きなかたまりの食物を、消化液だけで消化させるのと同じことが身体の中で行われるため、胃や腸に負担がかかります。
その結果、繊維質の食べ物がそのままの形で便に出てくることに。こうなると、もはやその食物が含む栄養素を十分に吸収するのは不可能だったということです。それだけならいいのですが、離乳期の子供に消化吸収できない食物を食べさせていると、アレルギーの元になるということまでわかってきました。(先月号を参照してください。)
よく噛むことが、身体の健康を支えています。意識してよく噛むクセをつけるとともに、しっかり噛める噛みあわせも作っていきたいものです。
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