最近の食物は柔らかいものが多いので、あまり噛まずに食べることができるせいか、昔の人ほど噛むことは出来ません。文献にのこっている昔のメニューで食事を作ったところ、現代人はその食事を食べ終える前に顎が痛くなった、という話も聞きます。
噛まなく(噛めなく)なった、ということを顕著にあらわしているのが、親知らずです。遺跡などから見つかる人骨の親知らずはまっすぐ生えていて、ちゃんと上下でものを噛むことが出来ていたことがうかがえますが、それに対し現代人の親知らずは良くてナナメに生えている程度。これではしっかりものを噛むどころか、痛む原因にさえなりかねません。
さて、話は変わりますが「噛む」という行為は、単にものを細かくするだけでなく、人間の身体をつかさどる脳への刺激を与えるために、必要不可欠のものであるということがわかってきました。脳を保護する頭蓋骨は、歯を支える歯槽骨とつながっているので、噛んだ力が頭蓋骨に伝わり、頭蓋骨を形づくるいくつかの骨の動きとあいまって、目に見えないほど微妙なものですが、膨らんだりしぼんだりします。これによって脳への酸素供給や老廃物の排出が盛んになります。
脳も細胞が集まってできていますから、酸素が充分にあり、活動によってできた老廃物をスムーズに排出することができれば、活発に働く事ができるでしょう。つまり、しっかりよりよく噛むことができれば、脳は活発に活動を続けることができるのです。
もし歯並びが悪く、かたいものが食べられないために柔らかいものばかり食べていると、噛む力自体が弱く脳への刺激がうまく伝わりにくくなります。こうなると酸素供給が充分でなく、思ったほど脳の活動は期待できないでしょう。
虫歯をそのままにしておくのはもっといけません。噛むと痛むので、痛くないところを選んで噛んでいるうち、本来の噛み合わせでない位置でずれて噛むようになり、よくない刺激が脳に伝えられるようになります。これにより、時には酸素の供給量が減少するような刺激が伝えられることだって考えられるのです。
俗っぽい話ですが、「頭のいい子」に育てるためには、正しい離乳を行い(※平成17年2月号を参考にして下さい。)噛める歯並びを作ってあげたあと、繊維質の食物を食べさせて顎の発達を促す事が必要でしょう。何でも充分に噛めるようになったらしめたもの、ですよ。(後は本人の努力次第!)
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