ちょっとツッこんだ 歯のはなし

 「いずれ生えかわるから、乳歯の虫歯はさほど神経質にならなくてもいい。」と思っている方いませんか?今月からしばらく、乳歯についてお送りします。

8月号

 

 

〈シリーズ・子供の歯〉 その@ 「乳歯が大切な理由」

   

乳歯の大切な仕事は、当たり前の事ですが食物をしっかりと噛むことです。これによって食物を飲み込みやすくするのはもちろん、だ液とよく混ぜ合わせることで、体に負担をかけず、効率よく消化吸収することができます。(噛むと、もともとアレルギーを引き起こす物質を含む食物が、身体を成長させる栄養素に変化し、アトピー体質になりにくくなるようです。)つまり乳歯が生えてから、それらが永久歯に生え変わる1213歳頃まで(もちろんそれ以後の噛みあわせにも注意を払わなければなりませんが)、しっかり噛める状態であることが、身体の発育に大きく影響するのです。

もし、虫歯を放っておくなどして噛めない状態が続くと、身体の成長を助ける栄養が不足するので身体のバランスを崩し、ひいては身体のひずみを生むことだって考えられます。

乳歯は決まった位置にあることで、いずれ生える永久歯の道筋を作っているのです。虫歯や打撲などで、早いうちに乳歯が抜けてしまうと、その隣にある歯が倒れこみ、永久歯が生えるべき場所を確保しておくことができなくなります。どうせでも顎が小さくなってきている現代の子どもたちに、このような状況は望ましいこととは言えません。永久歯の歯並びを更に悪化させるようなものだからです。

歯並びの悪化は、言葉を発音する時に大切な、舌の位置を狂わせます。そのせいでうまく発音できないのはもとより、しっかり噛むことができないので、顎の発育も促されません。顎が小さく、かたいものの食べられない状態で食物を食べ続けると、今度は歯を支える顎の骨や顎の関節を痛めてしまうことになるでしょう。

もう三十年くらい前の話ですが、そのころには三十歳台の女性に多かった顎関節症が、かなり低年齢化してきているもようです。(私が校医をしている小学校では、ここ数年、クラスに少なくとも一人か二人の児童の顎の不調を認めるようになりました。更に今年に至っては、一・二年生で四人もの顎の不調な生徒を認めました。これは相当危機的状況だと言わざるを得ません。)子どもさんが健やかに成長するために、乳歯はとても大切な役目を果たしているのです。

来月号は、
「永久歯に生え変わる時の注意点」について
お話ししましょう。
 

院長の吉田です。

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