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その−1

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吉田ちゃんのひとりごと −6− 

 バンクーバー冬季オリンピックで、日本は銀3・銅2という結果に終わりましたね。この数が多いか少ないかは別にして、スキー競技の選手が使用していたマウスピース(歯の上にかぶせる形で使用するもので、おもに転倒時の衝撃から歯を守る目的で装着する。)が、職業柄とても気になったので、これについてふれておきましょう。

 このマウスピース、以前のものに比べて色もカラフルになり、他国の選手も使用しているのを見かけるようになったせいか、着崩したユニフォームほど、お茶の間で話題になる事もなくなりました。これを使用している選手のほとんどは、前にも述べたとおり歯牙を守るために使っているようです。しかし、歯にかぶせて使いますので、かみ合わせに影響を及ぼす可能性は否めません。

 このマウスピースと同じようなものに、睡眠時無呼吸症の治療や、顎関節症の治療に使われるスプリントがあります。顎の異常で当院に来院される患者さんのほとんどから、他院にてこのスプリント治療を行い、残念な事に症状の改善がみられなかったか、もしくは悪化したという話を聞きます。

 筋反射を使い、患者さんの身体にスプリントによる治療が必要かどうか、ということを調べてみると、ほとんどの患者さんにはスプリントは必要ではないという結果が出ました。

 実際のところ、低位咬合による噛み合わせの異常が、顎関節症を引き起こすのですが、噛み合わせ面に何かをはさんで高さを上げる、という安易な方法では、残念ながら身体全体に影響を及ぼす噛み合せを、根本的に治療することは難しいのです。

 しかしながら、この治療が有効な方もいます。過去の症例を挙げておきます。

  (1) 歯並びが悪かったり、先天性欠損歯(もともと永久歯がない)があったりして
      噛むたびに身体が大きくずれる可能性がある場合。

  (2) 過去矯正をするなど、人為的に噛み合わせを変化させることで、大きく噛み
      合わせが狂ってしまった場合。

  (3) 歯が抜けても入れ歯を入れなかったために、噛み合わせの位置が本来の
      位置よりも大幅に低くなっている場合。

つまりスプリント治療が必要な方とは、大きく噛み合わせがずれている方と言えるでしょう。ほとんどの方は、かぶせなおしを行い、噛み合わせの安定を図れば、症状の改善がみられるものです。

 当院におけるスプリントを使った噛み合わせ治療の目的は、高さをあげることによって、身体のズレを元に戻す事にあるのではありません。むしろ噛むことによってズレそうになる身体にプロテクターのようなものを着けて、それ以上ズレないようにし、かつ身体のズレを、その人の身体の許容範囲内に正すことにあります。(要するに、ズレがある程度修正された時点で、スプリントによる調整は必要がなくなるわけです。)したがって、スプリントを長時間つけ続けることは、身体をずっと同じ状態に固定し続けることとなり、※身体の適度なあそびをなくすることに他なりません。

 特に球技などでは、攻撃⇒守備・守備⇒攻撃といった一瞬の身体の動きが勝負を左右するようです。スプリントやマウスガードを使用するということは、身体を守る(守備)ことに重点を置くあまり、身体の柔軟さや俊敏さを考慮せずに試合に臨むことに例えられるかもしれません。このような場合、試合においてその人の十分な能力が発揮できるのでしょうか?

 ちなみに昔、ボクシングの試合では、マウスガードの出来不出来が試合の結果を大きく左右したと聞きます。さらに付け加えますと、かつての日本スキージャンプの選手にスプリントを作製した医師の講演会にも出席しましたが、身体の基本的な動きを無視するような装置を作るなど、私には満足できるものではありませんでした。

 以上のことから、安易にスプリント治療を行うものではありません。自分にとってスプリント治療が合っているかどうかは、筋反射を取ればわかります。身体からの声というのは、私達が思っているよりずっと重要なものなのです。もし、このを無視して治療を行った場合、私達には想像もつかないくらい、手ひどいしっぺ返しがあることを覚悟した方がよいでしょう。

 さて、話を元に戻しましょうか。冬季オリンピックでマウスガードを入れていた選手たちの身体は、いったいどんなを発していたのでしょうか。あのマウスガードは、本当に選手の身体の機能を邪魔することなく、かつ、歯牙を守るという役目を果たしていたのでしょうか?もしかしたら、別の形で噛み合わせを整えることで、もっと身体のバランスがよくなり、よい成績を残せていたかもしれません。

 選手たちの身体で、じかに反応を取ってみたいものです。

身体の適度なあそびとは?

 竹ひごを曲げていくと、途中までは曲がるが、最後には折れてしまいますね。このときの曲げても折れない、いわゆるためのような感じと思って下さい。身体の柔軟性と考えてくださっても結構です。

 

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