環境戦隊サヌキレンジャー!
  

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金時レッド
環境戦隊サヌキレンジャー! J

 

 


 「何でこんなことになるんじゃ。あんたらは、島にとって悪いことは何もない、言うたでないか!」

「そうじゃ。土地は広うなる、島から誰も出て行かんでもようなるて――。」

開発業者に詰め寄る年寄りたち。――しかし。

「ちょっとわかりませんねえ。私は前の担当の人から仕事を引き継いだだけで…。それに、奇形の魚が増えたからって、この事業が原因とは限りませんし。」

何度も何度も業者との話し合いが行われた。しかし、そのたびに担当が替わり、いつまでたっても話し合いは平行線のままだった。そうこうしているうちに、業者は破産宣告をし、島に残されたのは大量の産業廃棄物と、絶望…。

 徹は、そんな大人たちのやり取りを間近で見ていた。無力な島の年寄りたちにいらだちを覚え、無責任な業者の汚いやり口にも、言い知れないほどの怒りに襲われた。

 快活な少年は、歳を経るごとに無口になった。ただひとり、幼なじみの少女が徹を気遣い、ことあるごとに話しかけては、かろうじてクラスのみんなと徹とをつないでいた。

「徹くん、どうしたん?」

「…どうしたって、何が?」

「最近、みんなと遊ばんようになって。みんなも心配しとるよ。」

「心配?…別に心配してくれ、なんて言った覚えはないけど?」

手元の本から目を離さずに、言う。少女はひとつため息をついて、でも気を取り直して明るく言った。

「ねえ、何読んどるん?」

自分の手元を覗き込まれて、徹は思わず少女を突き飛ばした。

「見るな!」

「きゃあ!」

少女は突き飛ばされて後ろの本棚にぶつかり、その拍子に頭上から本がいくつも落ちた。その大きな音に、近くにいた者たちが図書室に集まってくる。

「うわっ、どうしたんや?大丈夫か?」

「何するんな! もう!…阿久津くん、謝りまい!」

徹は黙ったまま席を立ち、部屋を出て行った。

「な〜に、あれ!」

「めっちゃカンジ悪い!」

「最近阿久津のヤツ、うれしげなの〜。」

「成績がトップやけんゆうて、うぬぼれとんやろ。」

「そうや。それにあいつ、もともと街の子やけんの。オレらのこと、田舎もんやいうてばかにしとるんと違うか?」

みんなはさんざん徹のことを悪く言ったが、少女だけは違った。散らばった本と一緒に、徹が読んでいた本も本棚に片づけた。

「大丈夫?――保健室行く?」

「ううん…かまん、大丈夫やけん。」

首を横に振り、少女も図書室を出た。徹が読んでいた本を見れば、彼がどれだけこの島を愛し、気遣っているかがよくわかったのだ。だからどれだけひどいことをされようとも、彼女には徹のことが嫌いになれなかった。

 徹はそれからもっと寡黙になり、内にこもった。

「自分以外、誰も信用してはいけないんだ。」

笑っていても、心の底ではいつも他人を疑っている。そのほうが都合良かった。自分のやりたいことをやり遂げるためには…。

徹が高校生になる頃、ようやく役所が動き始めた。島に残された廃棄物の本格的な調査が行われ、それが撤去されることが決まったのだ。しかし、その処理には膨大な時間と、費用が必要だった。そして彼は誓ったのだ。役に立たない島の大人たちには頼らない。すべて自分が書いた筋書き通りに、世の中を変えてやろうと。そのためには、どんな手を使っても、誰であろうと利用してやる、と。

今も本棚に並べられている、『ダイオキシンの恐怖』という本。ぼんやりとそれをながめながら、阿久津は感情を声に変え、吐き出した。

「私は何でも一人でやれるんだ。」

念を押すようなつぶやきは、いつもむなしく闇に消えるのだったが。

「私は、間違っていない…。」

 

 さて、これほどまじめに悩み、魔道に堕ちた阿久津と、雄平たちサヌキレンジャーはマトモに対決できるのであろうか?!

 結末は、神のみぞ知る???  

     続く .........。

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